思い通りに生きたがり (20181125)
"嫌いにならないで"
ここぞというタイミングであなたが言った。最悪だと頭を抱えた。面倒だと思った。なかったことにしたいと思った。いっそ話すのをやめたかった。嫌いになれたら私は幸せに近づけると思った。せっかく集めてきた大切なものを全部床にぶち撒けられた感覚だった。落とされてしまった大切なものを拾い集めるプライドはなかった。ただ呆然とした。むしろ笑いたかった。そりゃあこんなもんだよねって笑ってその場を後にしたかった。
お互いが思い通りに生きたがってしまってお互いの妥協点を合わせようとしても結局ずれている。一致してない。
お互いが思い通りに生きたがってしまってお互いを思いやれない。そりゃあそうだよね言わなきゃ伝わらないネットワークに生きてるんだから限度が狭い。
正直言って過ぎ去ったことにわざわざ干渉する性格をしてない。聞き出すのが怖いとも言う。だけど、あなたは過去のことこそ気にかける。知らないまま放っておくことの方が怖いと思っている。そこが決定的な違いだと思う。
そんな私でも不意に思い出してしまうことがある。なんでもないくだらない話をしていたときのこと。もしアルツハイマーになったら最後まで寄り添ってくれるの?とあなたが聞いたとき、私はもちろんと言った。あなたはどうなのと聞くと、喜んでお仕え申しあげるよと何故か得意げに合ってるのか分からない日本語で答えていたときのこと。
私はずっと、しょうもなくてくだらない話がしたいと思っている。それだけでもいいくらいだと本当に思っている。
許さなくていいや、そんな悲しがるなら。全部無かったことにできるならそうしてよ、そうした方がいいよって本気で思った。あとのことはどうでもいいと思った。
妥協点を探るための詰問という名の拷問。なんでもいいけど最初から妥協点を探してるのが嫌いだった。妥協なんてして欲しくないし妥協なんかしたくないと思った。ただ一度、一緒に立ち止まってほしいと思っていただけなのに。正解を探したいわけでも教えてほしいわけでもない。答えなんてそんな急いで出さなくてもいずれ出るものなんだろうと思う。テストじゃないから時間制限もなければ点数化もされない。だからゆっくりでいいと思う。こういうのを私が言語化するには映画一本分くらいの猶予みたいな余裕がほしい。許されるなら1日くらいもらいたい。
思い通りには生きられない。
なんだか悔しくなった。いつもは消えて無くなるはずなのに、いつものようにどうでもよくなるはずだったのに。
ワンコールもしないうちに電話に出たあなた。
やっと呼吸ができたみたいな口調。
捨てないでというか細い声。
意地悪しないでほしいとあれほど言っていたあなたが意地悪してと縋った。
一気に圧力がかかったみたいに胸が苦しくなった。その痛みとあなたの泣き声のせいで私は泣く羽目になった。これが答えだと思った。やっぱり1日くらい立ち止まった方がいいんだと思う。今回は私が強制的に立ち止まらせたけど。
お互いが思うシナリオが同じだったら問題はないけど、そんなことはそうそうない。だからゆっくりじわじわ重なりを大きくしていけたら幸せなんだと思う。
私が思うことは大体こんな感じで別に特別大それたことを考えてるつもりはない。ただ、だらだらこの時間が続いていけばいいと思っている。
2018.11.25
しまっておく必要も自分の中にとっておく必要もあまりないなあと思ってきたので。