筋書き通りは退屈
たまには予想が外れてほしい。
何に対しても予想しがちで驚きがない。全くつまらないとは言わないけど、刺激がない。
水は飽きないらしいけど、たまには炭酸水がいいし、オレンジジュースは果汁100%のやつがいいし、梅酒のお湯割りはマストでお願いしたい。全くダメだとは思わないけど、変化がないから。
唯一私の思惑通りにいかないことは、怒りの感情だと思う。自分自身も相手のことも、全く予測できない。
数ヶ月に一度、喧嘩する相手がいる。
その人は顔に似合わずとても繊細だ。
大切にしてあげたいという感情と、大切にしてほしいという感情がいつも私の中で衝突し合い、いつか粉々になる日が来るのではないかと戦々恐々としている。
喧嘩の内容といえば、はたから見たらどう見えるだろう。痴話喧嘩の部類なのか。それが私は気に入らない。感情に任せて言葉を発してしまうことにも、その内容にも、それに対する対応も全部好きじゃない。
そんなくだらないことを思っていると、いつのまにか主導権を握られている。頷くこともままならないまま、会話が終わる。圧倒的な劣等感を覚える。どうでもいいけど、喧嘩のタイミングが生理と被っている時が多く、女に生まれたことにも後悔してしまいそうになる。余計に嫌気がさす。イライラしていることに対して誰からも何も言われたくない。
このままでもいいか、と思い街に出る。知らない人に出会う。それでも、また家に帰るように思考も振り出しに戻ってしまうから情けない。
その人から「明日、家に来てほしいか」と連絡が来る。元々約束していた。来てほしいという返事を待ってる気がした。それが嫌だった。
私は「会いたい」と言った。懇願はあえて避けた。嘘はなかった。
「わかった、行く」という返事に少しの優越感を感じた。でもその気持ちは言えない。きっと「いつもあなたの言う通りにしているでしょう」というお決まりの台詞が来るはずだ。私は何も返さなかった。
その明日の日。私が自宅でちょうど玄関の死角にいたとき、突然扉が開いた。開け方がいちいち雑なのが特徴的だ。彼は私がいるのを確認すると、私をただ抱きしめた。今までの思考が全部無駄になったと思った。結局好きだと思った。エンディングだけは筋書き通りだった。